お勉強

富士山を学ぶ:景観

ども。
インタープリタータケザワです。

前回は富士山の気象観測について学びました。

レーダードーム
富士山を学ぶ:気象観測富士山の最高峰である剣が峰に目をやり姿を現すのは今はその役目を終えた旧富士山測候所。かつて気象庁東京管区気象台が富士山頂剣ヶ峰に設置していた気象官署で2004年に閉鎖されて以降は富士山特別地域気象観測所となり、自動気象観測装置による気象観測を行ってる施設です。富士山測候所とは?そもそも富士山における気象観測とは??など富士山における気象観測の歴史を学んでいきます。...

富士山では4月頃、積雪のピークを迎えて5月に入り雪が解け始め溶岩や火山噴出物に覆われた大地が姿を見せます。

そして、その雪解けの時期にしかみられない、残雪により山に現れる不規則・不均一な形のものを「雪形」といいます。

雪形は富士山に限らず全国の積雪地帯の山域でも見られます。
その平均的な大きさは100m四方程で、山の地肌の黒い部分と残雪の白い部分をみる形とその逆のパターンのものがあります。前者を「ポジ型」後者を「ネガ型」と呼んだりします。
富士山の雪形においては主に残雪の白い部分を形とする「ポジ型」が多いです。

また出現時期は、冬の間の積雪量や春の気温に左右されて一定ではありませんが、一つの場所で見られる形はほぼ同一です。これは地形が毎年ほとんど変わらないためですが、積雪量によっては多少左右されます。
そしてこの雪形は山の名前のモチーフになっている場合もあります。
例えば、北アルプスの常念岳は「常念坊」というとっくりを下げたお坊さんの姿、蝶が岳は、「羽を広げたチョウの姿」。白馬岳や各地の駒ケ岳では「馬の姿」が見られることがその山名の由来になっていると言われています。



また古くから、農事の開始や豊凶の占いにも用いられ富士山においても田植えの開始を知らせる「農鳥」の出現は例年ニュースになります。
農鳥の名の通り、鳥の形をした雪形ですが残雪の状況により、ヒヨコにみえたりハトサブレのように見えたり、はたまた不死鳥に見えたりします。
その他富士山で見られる雪形は、山梨側では「農鳥」以外に「豆まき小僧」、静岡側では「農男」「お犬雪」「かぐや姫」などがみられるようです。
わたしは農鳥的なものしか見たことないです。。。

続いて雪に関しての富士山の話「初冠雪」
初冠雪とは、対象とする「山の一部が雪等の固形降水により白くなった状態が初めて見えたとき」のことを言います。
富士山においては甲府地方気象台から確認された「冠雪」が富士山の初冠雪と決められており、それ以外の地域、静岡県などで冠雪されても初冠雪とはならないのです。
実際、私が住む静岡県から積雪が見えていたとしても初冠雪の発表はその先だったことがあります。
そして記録に残る最も早い初冠雪は2008年8月9日、最も遅い初冠雪は、1955年と2016年の10月26日。記録は1894年より。
また「初冠雪」と似た「初雪」という言葉もありますが、富士山頂における有人気象観測が終了してからは発表されていないため割愛。



また富士山を離れたところから信仰する遥拝は古来からありますが、その美しい富士山の姿を麓等から、眺めるという景観美に惹かれる文化も遠い昔から今に至るまであります。

「ダイヤモンド富士」
富士山頂に日が昇る・または日が沈む瞬間、太陽がダイヤモンドのように輝き富士山が神秘的な美しさを見せる姿をいいます。
とりわけ田貫湖では、富士山と田貫湖の「ダブルダイヤモンド富士」が見られる数少ないスポットとして知られています。

「赤富士」
雪のない季節の富士山が朝日や夕日に染まる姿
「紅富士」
山頂付近に雪が降る季節に富士山が朝日や夕日に染まる姿
などと言われますが、実際はそういった説もあるという程度で確かなものではないようです。かの有名な葛飾北斎作「凱風快晴」は別名「赤富士」とも呼ばれますが雪が描かれていますしね。
最もこの「凱風快晴」の解釈にも諸説ありますが。。。

その他富士山の影が雲海に映って見える「影富士」というのもあります。

そしてこれらはいずれも雲が少ない晴れたときにしか見ることができない富士山ですが、富士山の麓、富士市では「富士山が見えた日」の観測記録を毎年発表しています。

2019年の記録によれば富士山「全体が見えた日」は119日
最も多く全体が見えた月は、1月の17日間、次いで11月の20日間、12月の15日間の順。
そして、最も少ない日は、7月の0日、次いで6月の4日、8月の5日。
その年の天候や雲・霧の多さに左右されるとはいえ、おおむね11月~1月が良く見え、6月~8月が見えにくいという事ですね。

また、最も遠くから富士山が見られる場所はどこ?という話。

富士山は地球の丸さ、大気による光の屈曲を考慮すると理論的には最長でで236kmの言われます。ただこれは海抜0mでの話。
高い山からであれば更に遠くからも望むことができ、2020年5月現在で最も離れた場所の記録は322.9km離れた和歌山県那智勝浦町の色川小麦峠(色川富士見峠)とされています。その他富士山が見える北の最遠地としては福島県の日山、299kmという記録があります。

わたしは遠くの山から見る富士山が好きです。
遠くからみても富士山の姿は圧倒的で存在感があり日本一の山であることが再認識できます。
離れば離れるほどその姿をみるのは難しくなりますが、いつどんな時でもどんな山を登っても富士山の見える方向・その姿をイメージしながら登山をしています。

参考資料



ABOUT ME
富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ