今回は水陸両生の小型哺乳類である「カワネズミ」について学びます。
ネズミの名がついていますが、先の尖った鼻、小さな眼などの姿からモグラの仲間であることがわかります。
ニホンカワネズミとも言われ、かつては北海道と沖縄を除く日本各地に生息していましたが今では環境の悪化に伴いその分布がかなり狭まっています。
カワネズミは元々地中生活者であったモグラの仲間が水中生活に適応した種になります。
生活の拠点は陸上で、餌を求めて水中を移動し、主に水の澄んだ山間の渓流で見られます。また、低地では水温の一定した湧水地やワサビ田、高地になると標高2000mの川の源流部にまで生息します。
以前は全国の河川に普通に生息していたようですが現在では見られなくなったことから、水がきれいで隠れ家となるような岸辺があり、植物が豊富な河川を好むようです。
カワネズミの体は水中生活に適応したつくりをしており、その頑丈で長い尾は、水中で流れに逆らって泳ぐ時、岩にあてて体を保持します。また手足の指にはブラシのような剛毛がびっしりと生えて水掻きの役割があると考えられています。そして、大きな後ろ足はオールの役割を果たし推進力を生み、前足は水面下で方向を変えたり、潜水する時に使います。
体一面を覆っているダークグレイの美しい毛は、水中での体温低下を抑え水が皮膚に侵入するのも防ぎます。カワネズミにとってこの体毛はとても大切で、日頃から毛づくろい(グルーミング)をしてメンテナンスをしています。
昼夜関係なく活動し、巧みな泳ぎで水中に棲む様々な生き物を捕食。
石の下に隠れたサワガニ、川底の水生昆虫やカエル、またニジマスやイワナなどの魚も狙い、いったん噛みつくと魚たちに逃げる術はありません。これらのほかに、ハコネサンショウオや陸生の昆虫、ミミズ、カワニナ(巻貝の一種)なども食べます。
逆にカワネズミの捕食者はイタチ。
巣は乾燥した陸上の岩の下や地中に作り、巣の中に多量の枯葉を運びこみます。出入り口はイタチなどの侵入を防ぐため3-4cm程度、奥行きは1mほどになります。
生息環境は年々悪くなっており、地上を歩く事があまりないカワネズミは、水質の悪化はもちろんのこと、河川やその周辺の開発により河川が分断され自由な移動が妨げられてしまい、すみかを失っています。
「カワネズミ」
分類:トガリネズミ目トガリネズミ科カワネズミ属
分布 :日本(本州・九州)低地~標高2000mまでの山間の渓流に生息
大きさ:頭胴長95〜113mm 、尾長90~124mm程度 後ろ足長23〜29mm
体重 22〜56g
特徴:毛色は黒みを帯びた灰色または黒褐色。
水中では、毛の間に閉じ込められた気泡が光に当たって反射することで銀色に輝いて見える。その姿から「銀ネズミ」とも呼ばれます。
生態:主に河川を泳ぎながら移動し水中や水辺で、水生昆虫・魚・カエルなどを食べる。日中も活動するが特に夜間に活発になります。捕食者はイタチ。
寿命は3年程度で、春と秋 1年に2回出産し、1度に2~5の子を産むとされています。
アイキャッチ画像(カワネズミ):出典:ウィキメディア・コモンズ File:Kawanezumi.jpg
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