前回より富士山の植物の垂直分布について学んでいますが今回はその続きです。
植物の分布(植生帯)は、一般的に標高差=気温差により変化します。
富士山にておいても同様です。
その植生帯は研究者や学者により異なりますがおよそ五つに区分されます。
今回は海抜0m~約800mの低地帯の植生について学びます。
① 低地帯(海抜0m〜約800m)
低地帯は古くから人々の生活圏であったこともあり、開発が進み自然植生がほぼ失われています。
その中でかつての自然の面影を探ることができるのは社寺林や急傾斜地の自然林など開発を免れた地です。そのような残存林とも呼ばれる自然林を頼りにすることで本来の自然植生を推測することができます。
駿河湾に面する静岡県側の富士山では海辺の砂丘上にはクロマツ林があり、続いてスダジイ、タブノキなど常緑広葉樹の森が広がります。
そして、低湿地帯にはハンノキやヤナギ類がまばらに生えて、ヨシやオギの湿原が広がります。
続いて海抜高度が増す丘陵地ではスダジイに加えてアカガシやアラカシ、シラカシなどカシ類が優占して森が広がり、低木ではヤブツバキ、アオキ、ヤツデ、サカキなどよく知られた木が生育し、ツル植物のサネカズラやキヅタ、テイカズラも見られます。
富士山の低地帯でよく見られるスダジイやヤブツバキなどの常緑樹は光沢のある小型で厚い葉を持つことから照葉樹と呼ばれています。
この照葉樹林は海抜700〜800mまで続き、高度が増すとウラジロガシが多くなり、やがてモミやシキミが現れ、森は低地帯の照葉樹林から山地帯の夏緑広葉樹林帯へと移行していきます。
常緑の広葉樹でもある照葉樹林と呼ばれる森は、西南日本から東アジアに広がり、富士山の低地帯でもかつてはこれら常緑の広葉樹の森が広がっていたと考えられています。
ただ現在では前述したとおりそのかつて森が見られるのは神社などに残る鎮守の森と呼ばれる地のみです。
そのような神の名の下に残された自然林の面影を求め富士山の低地帯に残る鎮守の森を巡るのも楽しそうですね。
Q 海抜と標高の違い。
標高は東京湾の海面からの高さ、海抜は近隣の海面からの高さ(富士山で言えば駿河湾)を表すときに使うようです。
Q 社寺林・鎮守の森。
神社やお寺などに残されている自然で、一般的には開発などされていない手つかずの状態のまま残されている林や森であることが多いです。
☆ 富士山周辺の鎮守の森
富士市 水神社
富士市 間門浅間神社
富士市 医王寺
長泉町 割狐塚稲荷神社(わりこづかいなりじんじゃ)
三島市 三嶋大社
御殿場市 胎内神社
裾野市 須山浅間神社
教材資料