富士山

富士山トレッキングコース:須山口登山道〜水ヶ塚公園

頂上を目指すだけが富士登山ではないということでさまざまな富士山のトレッキングコースを紹介していきます。

今回は「富士山の南麓、須山口登山道」のルートです。

スタート地点は十里木高原、須山口登山道入口(標高893m)。富士サファリパーク近く、富士山資料館裏手あたりです。
自家用車の場合は無料の駐車場があり、公共交通機関利用の場合は、裾野駅よりのバスが利用可能です。

須山登山道入口

須山口登山道は、世界遺産富士山の構成資産にも選ばれている須山浅間神社を起点とするかつての登拝道で一時期廃道になっていましたが、新たに整備された登山道です。
左手に別荘地、右手は自衛隊の演習場、愛鷹山を背に富士山の頂上を目指す登山道です。自衛隊の演習場脇を登山道が続いているため、大砲や射撃の音を聞きながらのトレッキングとなります。

宝永山分岐
富士山を学ぶ:御殿場ルート富士山頂へ続く各登山道の歴史やその背景について学んでいきます。今回は「御殿場ルート」。 ここまで富士宮ルート・吉田ルート、そして須走ルートの歴史について学んできました。 御殿場ルートは現在の山頂へ続く四つのルートの中で最も新しくできた登山道であり、起点となる御殿場口新五合目の標高は1440mと最も低い登山口になります。 ...

スタートしてしばらくはベンチなどの設置もあるよく整備された遊歩道でちょっとした散歩コースになっています。
遊歩道を歩きしばらく進むと一旦車道にでて再び登山道に戻ります。ここから先は薄暗い森の中を進むことになります。

この十里木高原一帯の別荘地や富士サファリパーク周辺は溶岩流の上に建てられています。その溶岩流の要因になった噴火は、須山口登山道をしばらく登った標高1300m付近に見られる側火山、鑵子山の噴火によってもたらされたものと言われています。
鑵子山は標高1306mで今からおよそ1300年前の比較的新しい噴火によって誕生した側火山で、そのすぐ隣にあるやや低い側火山は黒塚と呼ばれ標高1260m、こちらはより古く7000年前の噴火の産物と言われています。
須山口登山道はこの二つの側火山を巻くように迂回して続きます。
そしてこの登山道は、水ヶ塚まで続くかつて利用されていた水源地沿いに作られているため、登山道沿いには水道管や水源地が散見されます。



車道から登山道に戻りしばらく進むにと弁当場と言われる水源地に着きます。この地はかつて源頼朝が富士の巻狩りを行った際に幕営地として炊事を行った場所とされたことからその名がつけられています。
ちなみにこの巻狩りは軍事演習的意味合いも強かったと言われており、時を隔てて自衛隊が同じ地で演習を行なっているというのは興味深いところです。

弁当場

この弁当場から先は道も荒れており目印も少なく迷いやすくなります。ただ多少道が外れても遭難するほど深い森ではないため、来た道を戻る、またはスマホのGPSで確認すればすぐに登山道に戻ることができます。
黒塚の裾野を進んでいくとその先は遊園地ぐりんぱの敷地となり観覧車などの遊具を左手に見ながら、また軽快??な遊園地の音楽を聞きながら進んでいきます。このあたりは、特に見どころもないためひたすら登り続けるといったところです。そして水ヶ塚水源地までくると、目的地まであと僅か、富士山スカイラインに出て左手に進むと目的地の水ヶ塚公園に到着です。

水が塚公園よりこの日は残念ながら雲が。。。

 

水ヶ塚公園には売店やトイレもあり一息つく事ができます。夏山の富士登山シーズンには、富士宮5合目行きシャトルバスの発着地兼駐車場となるため、大いに賑わいます。

この水ヶ塚公園からは天気が良ければ富士山山頂や宝永山・宝永火口の絶景ポイントとなるほか、広場やクロスカントリーコースも併設されています。

また、駐車場の周囲を見ると、小さな丘がいくつか見られます。これらはいずれも富士山の側火山群。富士山では北西麓及び南東麓でこのような側火山群が見られます。
水ヶ塚公園駐車場西側にある小さな側火山は腰切塚と呼ばれ、展望台も設置してあり水ヶ塚公園の敷地内にあります。
またその南側には西黒塚が、公園の東側には片蓋山があります。腰切塚と西黒塚は今からおよそ3000年前、片蓋山は更に古く8000年前の噴火によって誕生したと言われています。

腰切塚


水ヶ塚公園の標高1450m。
この先の登山道は御殿庭を経由し宝永火口へ至るルートと、須山御胎内・幕岩、二ツ塚周辺を経由し御殿場登山道に至るルートに分かれます。この先から本格な富士登山となりますが、それぞれルートについてはまた今度紹介します。

さて、下山は同じルートで下りていきます。水ヶ塚公園からのバスは季節運行で本数が限られていたり運休している場合があるため、スタート地点へ再び戻るピストンでのトレッキングが無難になります。
コースタイムは登りが約3時間、下りが約2時間半ほどになります。

以上このコースの見所はスタート地点そして水ヶ塚公園からの富士山の眺望南東麓の側火山群、頼朝らが幕営したと言われる水源地などです。スタート地点近くの遊歩道ではバードウォッチャーの方々の姿がよく見受けられますが、ルート全般を通して登山者はあまり見られず静かにトレッキングを楽しむことができるルートになっています。



ABOUT ME
富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ