お勉強

山の天気は変わりやすい??:水蒸気と不安定な大気

天気について学んでいきます。
前回、山の天気が変わりやすい要素の一つ「上昇気流」について学びました。

山の天気は変わりやすい??:上昇気流「山の天気は変わりやすい」とよく言われます。 また天気が雨予報であれば平地よりも先に山間部が天気が崩れます。そこで今回は、なぜ山の天気は変わりやすいのか??をテーマに天気について学びます。まず山の天気を左右する3要素があります。「上昇気流」「水蒸気の量」「大気の不安程度」です。ここから掘り下げていきます。...

今回は山の天気を左右する要素より「水蒸気」「大気の不安定度」について学んでいきます。

山ではその凸凹とした地形の影響により空気が強制的に上昇させられることで上昇気流が発生します。ただ上昇気流が発生しても雨雲が発生し天気が崩れるとは限りません。大気中の水蒸気の量が雨雲の発達に関係してきます。

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例えば富士山。
富士山の南麓である静岡県側と北麓の山梨県側では天気が異なる場合があります。特に静岡県側で雲に覆われ雨が降っているのにも関わらず、山梨県側の富士山では晴れている場合があります。
これは静岡県側が海に面しており水蒸気を多く含んだ空気が南風にのって富士山にぶつかりそれが上昇して雲が発達するためです。特に夏になると太平洋高気圧や台風などの影響によりそれが顕著になります。

一方、冬は西高東低の気圧配置となり北西や西風が多くなります。今度は富士山の山梨県側が風上になりますが、これは冷たく乾燥したシベリアからの空気が日本海を横断することで水蒸気を多く含みながら日本列島に到達します。この影響で日本海側は大雪に見舞われますがこの空気が富士山に到達する頃にはたっぷりと雪や雨を落とし乾燥したものになっているため風上側の山梨県側の富士山では雨(雪)雲まで発達することはあまりありません。

ヒマラヤでも同様に夏はインド洋からの暖かく湿った季節風がヒマラヤ山脈にぶつかるため風上側であるインドのアッサム地方は雨期の期間、世界有数の多雨地帯になります。反対に冬はシベリアからの寒冷で乾燥した高気圧が吹き付けますが空気が乾燥しているため風上側であるチベット高原ではあまり雨は降りません。

このように風上側の山で上昇気流が発生しても必ずしも雨や雪が降るのではなく水蒸気の量によって天気は大きく左右されます。そこで上昇する空気にどの程度の水蒸気が含まれているかを予想するのが鍵になってきます。
なかなか予想するのも難しいですが、どちらの方角から風が吹き、それが季節や時間帯によりどのような特徴があるのかくらいは事前に知っておく必要がありますね。



続いて「大気の不安定度」
山にぶつかって発生した上昇気流は斜面に沿って雲を発生させながら上昇を続けやがて成長を止めます。その成長の度合いにより山頂を完全に覆ったり、標高の高い山では山頂に到達する前に雲の成長が止まり、頂上から雲海を望むことができることもあります。

この雲の成長を決める上昇気流の強さには大気の不安定度が一つの指標になります。
空気は暖かくなると軽くなり上の方に溜まり、冷やされると重くなる下の方に溜まっていきます。この暖かい空気が上、冷たい空気が下というシンプルな状態が大気にとって安定した状態となります。
不安定な大気とはこれが崩れた状態です。
地上付近の大気の層である対流圏(上空約8km~16km)内では高度が上がることに気温が下がります。つまり基本的には大気の状態はある程度不安定、ストレスがかかっている状態になっているのです。しかし天気が崩れるほどの不安定でさはなく耐えることができます。

そして、地上付近が暖められ、上空に寒気が入り、地上と上空の温度差が大きくなると空気は耐えきれなくなり冷たい空気は下降し暖かい空気は上昇し上下の温度差を緩和しようとします。
これが大気が不安定な状態です。
この状態で山に風がぶつかることで更に強い上昇気流が発生し、大きい積乱雲が発達します。



大気が安定した状態とは、重い寒気が地上にあり上空に軽い暖気がある状態で、地上付近で湿った空気が上昇し雲が発生したとしてもそれ以上発達することはありません。青空にぽっかりと浮かぶ積雲や冷たい空気が下層に入ったときに発生する層積雲はそのサインです。低い山では霧に覆われて雨になることもありますが高い山の頂上や稜線からは下界に広がる雲海が期待できます。

一方、大気が不安定な状態とは、地表付近の空気が暖かく湿っており、上空に寒気が流入することで地上と上空の温度差が大きい状態で、積乱雲が発生したり成長したりして天気が崩れやすくなります。したがって雲がどこまで成長するか?そして天気が崩れるのか?は、上空にどれだけ強い寒気が入ってきたかによることになります。

参考資料



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富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ