前回より翼手目(コウモリの仲間)について学んでおりますがその続き。
今回は日本に棲むオオコウモリ類について学んでいきます。
現在日本に生息するオオコウモリ類は大きく分けて、
南西諸島に棲む「クビワオオコウモリ」と小笠原諸島に棲む「オガサワラオオコウモリ」の2種。
オオコウモリは小型のコウモリ類より原始的で、恐竜が絶滅した直後の6000万年前(暁新世)の時代に温暖な気候の下で昆虫を食べていた原始食虫類を祖先とし、食虫性の原始翼手類から分岐して、独自の進化を遂げた食果性の飛行哺乳類と考えられています。
大きな目を持ち、超音波を発せず(日本のオオコウモリ)、視力で飛ぶ有視界飛行をします。小型のコウモリのように空中で獲物を捕らえることはせず果実などを食べて生活しています。
翼を広げるとカラスくらいの大きさとなり、夜になると餌場へ移動しガジュマルなどの食用となる樹木の上を旋回、身体を反転させて華麗に枝にぶら下がります。
昼間のねぐらでは風のあまりない林を選び、これまた枝などにぶら下がり休息します。
集団で休息する時は数本の木に集まり、日中も時折目を覚まして、毛づくろいしたり翼を開閉したりすることがあります。
クビワオオコウモリは亜種(生息する地域の違い)により休息の仕方が異なります。ヤエヤマオオコウモリは集団で、ダイトウオオコウモリは集団もしくは分散、エブラオオコウモリはオスメスともに分散傾向が強く特にオスは頻繁にねぐらを変えるようです。
別の種であるオガサワラオオコウモリは単独または数十頭の集団で斜面などの樹木で休息し、季節によっては10頭前後が互いに寄り添います。
行動時間や行動範囲も種・亜種により違いがあり、エブラオオコウモリは完全な夜行性、ダイトウオオコウモリは日没前から飛翔活動が始まり、オガサワラオオコウモリも基本は夜行性ですが、母島と父島では日没後、 南硫黄島では昼間、 から飛翔活動が見られます。
これらの差は人為的影響や猛禽類などの天敵の影響によるものと考えられています。
また、行動範囲は食べ物の分布状況とねぐらの場所、季節によって左右されます。
ダイトウオオコウモリでは南北大東島間の移動が確認されており、その距離は8kmにも及びコウモリとしてはかなり広い行動範囲を誇ります。ちなみに小型のコウモリでも3km程度です。
食物は主に果実。
クワ科のガジュマル・アコウ・ビワ、パパイアやタコノキ、バナナなどを食べます。
なかでも、クワ科の樹種は実がなる時期が株により異なるため一年を通して果実を得ることができます。
その他、春や夏期には花蜜や花粉を食べ、ヤシ類の葉やガジュマルの葉・樹皮もタンパク質補充や冬の餌不足を補っています。また、夏には果実や枝・幹にとまるコガネムシやセミなどの昆虫類も捕食します。
出産時期や妊娠期間も種・亜種により異なりますが、産子数はいずれも1産1子。
そして、小型のコウモリは蚊などの虫を食べてくれるため人にとっては益獣と言われますが、オオコウモリ類は作物である果実などを食べてしまうので害獣とみなされてしまっています。かわいそうに、、、
クビワオオコウモリ
オオコウモリ科オオコウモリ属
日本の固有種。
エブラオオコウモリ(口永良部島やトカラ列島)オリイオオコウモリ(沖縄島)
ダイトウオオコウモリ(大東諸島)ヤエヤマオオコウモリ(八重山諸島)の4亜種がいます。
大きさ:頭胴長19-25cm 前腕長12.5-14.5cm
体重320-550g
エブラオオコウモリが最大でヤエヤマオオコウモリが最少
特徴・生態:体毛は暗褐色で特に首や前胸部の毛は亜種や個体によって白色から黄褐色まで変化します。首を取り巻く薄色の毛帯が特徴で名前の由来にもなっています。日中は樹冠部の枝で休息し主に夜間に活動します。捕食者(天敵)は、イリオモテヤマネコ・猛禽類・ヘビなど。
オガサワラオオコウモリ
オオコウモリ科オオコウモリ属
日本の固有種。
小笠原諸島・硫黄列島に生息。
大きさ:頭胴長20-25cm 前腕長13-14.2cm
体重390-440g
特徴・生態:クビワオオコウモリと同じく体毛は全身暗褐色で、光沢のある銀白色の毛が散生。首の毛帯はなし。
基本、夜行性ですが南硫黄島の個体は昼間も活動します。捕食者(天敵)はノスリなど猛禽類。
絶滅種
オキナワオオコウモリ