日本に住む小型の哺乳類について学んでいきます。
小型の哺乳類は、モグラ類やネズミ類、コウモリ類、ヤマネなどが日本に生息しており、全哺乳類の約70%を占めています。
その中より今回は「トガリネズミ目」かつては食虫目と呼ばれていた種類の哺乳類について学びます。
モグラやハリネズミなどの特徴的な形態を持つものを除けば、トガリネズミ目のほとんどはネズミと似たような姿の小型の動物です。この目に共通する特徴は、細長い吻部(突き出した口)と鋭い突起を持った歯です。
現世しているトガリネズミ目は6科で種数は、365種とも428種ともいわれています(研究者らの分類により異なる)
このうち日本に生息するのは、トガリネズミ科モグラ科の2科、合わせて18種程度です。
トガリネズミやモグラの仲間は、基礎代謝率が極めて高いため、たえず大量の餌を食べないと生きていけません。それでも温帯北部から寒帯の寒い地域に多くのトガリネズミ類が生息しています。これは北方の寒冷地域では枯死植物の分解が遅く、地表に厚い落葉層や腐植層が形成されることで餌となるミミズなど大量の無脊椎動物が生息しているためです。
トガリネズミ目は地表から地下に住む小動物を食べるため一般に眼の機能は低下しており、それを補うように吻端(長く伸びた口先)の皮膚に発達した鋭敏な触覚器官や口ひげの触覚を使い、周囲を認識していると考えられています。
世界のトガリネズミ目を外形と生活様式から大別すると6つのグループになります。
トガリネズミ型
外見は一般のネズミに似て、身体は小さく尾が長い。前足とその爪も小さく、耳介も小さく大部分は覆われた毛により隠れています。温帯から寒帯の草原や森林に分布し、落葉層や腐植層で昆虫やクモなどを食べます。
ジネズミ型
外見はトガリネズミに似ますが、耳介がやや大きく暖温帯から熱帯に分布。
地表にて昆虫やクモを主食とし、代謝率はトガリネズミよりも低くなります。
ヒミズ型
同一地域にすむトガリネズミよりもやや大きく頑丈で、尾は短い、前足とその爪はやや大きく耳介は小さいか欠損しています。半地下性で、主に腐植層で昆虫や小型のミミズなどを食べます。
モグラ型
ヒミズ型より地下に適応し、身体は円筒形でさらに頑丈となり、前足や爪も強大、尾は短く、耳介はなし、地下トンネルに住み主に昆虫と大型のミミズを食べます。
カワネズミ型
水性適応し、密な体毛を持ちます。尾は長くその下面には竜骨状の長毛が生え、手足の指の両側には水掻きとなる剛毛があります。水辺にすみ、水生昆虫・エビ・カニ・小魚などを食べます。
ハリネズミ型
身体は頑丈で針状の毛で覆われ、尾は短い、ほかの種に比べて眼が大きく、草地や林の地上にすみ肉食傾向の強い雑食性です。
これらの6つの生活型は、トガリネズミ目の中で系統に関係なく進化しており、モグラ科であっても他の生活型が見られます。
日本のトガリネズミ目では、ハリネズミ型を除いた5つの生活型がみられます。
トガリネズミ目の仲間は生息地が落ち葉の下や土中であることから、なかなか見かけることはありません。それでもモグラ塚(穴)は公園などでも見かけますし、森を歩いていると稀にヒミズ類も目にすることがあります。
ネズミと姿が似ていることもあり識別の難しい種もいますが、生息場所・そして最大の特徴である細長い吻部(突き出した口)を目印に探してみて下さい。