健康のために運動をしようと思ったとき、多くの人が真っ先に思い浮かべるのがウォーキングではないでしょうか。手軽で安全なウォーキングは、確かに優れた健康増進法です。しかし、最近の研究で、低山登山にも素晴らしい健康効果があることがわかってきました。今回は、週1回の低山登山と週4回のウォーキングの健康効果を比較した興味深い研究結果をご紹介します。
研究の概要
鹿屋体育大学の研究チームが行った調査によると、週1回約3.5時間の低山登山を行うグループと、週4回約1.5時間のウォーキングを行うグループを比較したところ、驚くべき結果が明らかになりました。
慢性疾患の予防効果
まず注目すべきは、両グループとも慢性疾患の有病率が同年代の平均よりも低かったことです。これは、定期的な運動が健康に良い影響を与えていることを示しています。
しかし、さらに興味深いのは、糖尿病の有病率において登山グループが顕著に低かったことです。70歳前後の年齢層で、一般的な日本人の糖尿病有病率が約20%であるのに対し、登山グループでは男性3.8%、女性1.4%と驚異的な低さでした。
登山の特徴的な効果
1. 筋力向上と痛みの改善
登山グループでは、筋力向上を実感している人の割合が高く、さらに腰痛や膝関節痛の改善を感じている人も多いことがわかりました。これは登山の運動特性によるものと考えられます。
– 上り坂：全身の筋肉を使い、心肺機能を高める
– 下り坂：筋力向上に効果的で、特に太ももの前面の筋肉（大腿四頭筋）を鍛える
– 不整地の歩行：バランス感覚を養い、普段使わない筋肉も使う
これらの要素が総合的に作用し、全身の筋力向上につながっていると考えられます。筋力の向上は、日常生活での動作を楽にし、腰痛や膝の痛みの改善にもつながります。
2. 糖尿病予防効果
登山グループで糖尿病の有病率が低かった理由としては、以下の要因が考えられます：
1. 筋量の増加：登山による筋力トレーニング効果で筋量が増加。筋肉は糖を消費する器官であり、筋量が多いほど血糖値のコントロールが良好になる。
2. 糖代謝の改善：特に下り坂歩行が糖代謝の改善に効果があるという研究結果がある。
3. 長時間の持続的運動：3.5時間という比較的長い時間の持続的な運動が、インスリン感受性を高める可能性がある。
3. メンタルヘルスの向上
登山グループでは、精神面での充実感を感じる人の割合が高いことも明らかになりました。特に以下の項目で効果を実感している人が多かったのです：
– 交友関係が良くなった
– 生活が充実した
– リフレッシュできるようになった
これらの効果は、登山の持つ以下のような特徴によるものと考えられます：
– 自然環境での活動：ストレス解消や気分転換効果
– 仲間との協力：社会性の向上、孤独感の解消
– 目標達成感：自己効力感の向上、自信の獲得
ウォーキングとの比較
ウォーキングも素晴らしい運動であり、本研究でもその健康増進効果が確認されています。特に「歩く速度が速くなった」と実感している人の割合は、ウォーキンググループの方が高いという結果でした。
しかし、筋力向上や精神面での効果、そして糖尿病予防という観点では、登山の方がより顕著な効果を示しています。
まとめ：週1回の低山登山でこんなに変わる！
週1回、3.5時間程度の低山登山は：
1. 慢性疾患（特に糖尿病）の予防に効果的
2. 全身の筋力アップや痛みの改善に役立つ
3. メンタルヘルスの向上にも大きく貢献
という、素晴らしい健康効果が期待できることがわかりました。
おわりに
ウォーキングも素晴らしい運動ですが、時間や頻度の面で負担に感じる方もいるでしょう。そんな方にこそ、週末の低山登山をおすすめします。自然を楽しみながら、効率的に心身の健康増進ができる登山。あなたも始めてみませんか？
健康的な生活は、楽しみながら続けることが一番。登山という楽しい趣味を通じて、心身ともに健康になりましょう！
ただし、登山を始める際は、自分の体力に合わせて無理のない範囲から始め、徐々にレベルアップしていくことが大切です。また、安全面にも十分注意を払い、適切な装備と知識を身につけてから挑戦しましょう。
参照論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/66/0/66_20054/_pdf/-char/ja
