今回はトガリネズミ目より「ジネズミ」及び「ジャコウネズミ」について学びます。
ジネズミは韓国の済州島にも分布するものの、その主体はほとんど日本列島であり、日本の固有種に近いという事でニホンジネズミとも呼ばれます。これに対馬のチョウセンコネズミ、南西諸島に分布するワタセネズミ、奄美諸島固有のオリイジネズミ、そしてこれらの亜種を加えたのが日本のジネズミの仲間です。
ジネズミ類は他のトガリネズミ目同様、ネズミの名がついていますが、モグラに近い仲間で鼻先が尖っています。
本来の生息域は熱帯や亜熱帯であり、それらの地域では有機物の分解が早いため腐食層がなく、また落葉層も貧弱なため、北方に進出した種である日本のジネズミ類は比較的地表に落ち葉が少ないところに住んでいます。
特に他のトガリネズミ類と共存しているような地域ではその傾向が強く、それにより棲み分けをしているようです。食性も異なり昆虫やクモを好みます。
「ジネズミ」
分布:北海道中心以南、本州、四国、九州の他、島嶼部に分布
サイズ:頭胴長61〜84mm
特徴:日本のジネズミ類のなかでは大型種。トガリネズミ類より耳がやや大きい。尾には全面を覆う短毛の他にまばらな長毛がある。背面は暗赤褐色または暗褐色。
生態:低地から低山帯の河畔、農耕地周辺のしげみ、林縁などに多く人家の庭園でもみられる。昆虫やクモ類を好む。
雄は繁殖期に特有の強い臭いを出します。またメスは春にふつう3〜4の子を産みます。
寿命は1年余りと推定されています。
その他、ワタセネズミは南西諸島に分布するオナガジネズミの亜種。ブッシュや草地、低山の林縁などにすみます。ワタセの名は動物学者渡瀬庄三郎にちなんでいます。
チョウセンコジネズミは、アジアからヨーロッパに広く分布するコジネズミの亜種で、日本では対馬にだけ生息します。河畔は林縁の藪に生息し昆虫はクモを食べます。
オリイジネズミは、奄美大島と徳之島の特産固有種とされていますが生態など正確なことはまだわかっていません。生息数もきわめて少なく絶滅危惧種に指定されています。
続いて、ジャコウネズミ。
日本に生息するトガリネズミ目の中で人家周辺に住むのはジャコウネズミだけで、その生態はドブネズミやクマネズミと比較されます。人の移動とともに分布を拡大し南西諸島では比較的古く、長崎では15世紀頃から生息するようになったようです。
食性は、昆虫あるいは動物の死体など動物食で雑食性の傾向が強く残飯の確保が容易な家畜小屋近辺に多く生息します。
分布は長崎が北限で、鹿児島市の限られた地域や沖縄本島など南西諸島に分布。
ジャコウネズミは実験動物としても知られ、実験動物名「スンクス」とも呼ばれています。また、人の手にのるくらい慣らすことができ「手のりスンクス」とも称されます。
「ジャコウネズミ」
特徴:吻部が突出、触毛もよく発達しておりオスはメスよりやや丸顔。尾には毛がまばらに生え、オスの尾の根元は太く先端に向かって細くなります。眼球は小さいが水晶体も揃っています。オスの胴には強い麝香(ジャコウ)の匂いを発する分泌腺があり名称の元になっています。
分布:長崎市、野母半島、福江島、鹿児島市の限られた地域及び南西諸島など。
サイズ:頭胴長オス115〜133mm メス105〜120mm 尾長オス70〜90mm メス65〜80mm
生態:旺盛な繁殖力を伴い、人間の移動ともに分布を広げてきましたが低温域で生育できない動物であるためか分布の北限は長崎県。
妊娠個体は1年中見られるが冬になると繁殖活動が鈍る。30日ごとの連産も可能で、産子数は1〜5子。寿命は飼育下では3年以上生存した個体もあるとのこと。
ジネズミ、ジャコウネズミとも野で見かけたとしてもネズミの仲間との違いを見極めるのは難しそうです。図鑑などでじっくり見ることができればその違いは歴然ですが、おそらく動きも早いので、じっくり観察している時間はなさそうですしね。
とにかく、他の種同様にトガリネズミ目の特徴であるとんがった吻部(鼻先)に着目することが見極めのポイントです。
アイキャッチ画像(ジャコウネズミ):出典:ウィキメディア・コモンズ Suncus murinus.jpg