今日の富士山
今日は曇りです。昨日降った雪がまだ残っていて、あたりは再び冬の色に戻っています。
2026年3月11日。東日本大震災から、ちょうど15年が経ちました。
富士山の麓で暮らしていると、この日は毎年、静かに過ぎていきます。特別なことは何も起きません。ただ、山はいつもと同じようにそこにあります。その変わらない姿を見ながら、15年前のことをそっと思い返しています。
あの日、富士山の地下で何が起きていたのか
2011年3月11日午後2時46分、東北地方太平洋沖地震(M9.0)が発生しました。そしてその4日後、3月15日午後10時31分には、富士山のすぐ近くを震源とする静岡県東部地震(M6.4)が起き、富士宮市では震度6強を観測しました。
この二つの大きな地震のあと、富士山の地下にも何らかの変化が起きた可能性があると考えられています。実際、その後の研究では、富士山直下で起きる低周波地震活動に変化が見られ、地下のマグマ系が巨大地震の影響を受けた可能性が指摘されました。
当時は、これらの地震によって富士山のマグマだまり付近に大きな応力変化が加わった可能性が報じられました。報道では「最大約1.6メガパスカル」という数字も紹介され、一部では宝永地震のときより大きな影響だった可能性も語られました。ただし、このあたりの数値や比較は計算条件によって変わるため、確定的に言い切るよりも、「噴火に影響しうる規模の変化が加わった可能性がある」と捉えるのが安全です。
その後、富士山は実際には噴火していません。現在も気象庁は、富士山の火山活動について「静穏な状況」であり、「噴火の兆候は見られない」としています。噴火警戒レベルも1のままです。
つまり、あの日を境に富士山の地下で何かが変わった可能性はある。しかし、それがただちに噴火につながる状態だったとまでは言えない――。現時点では、その理解がもっともバランスの取れた見方といえそうです。
貞観噴火と東日本大震災が重なる
ここで少し、歴史の話をさせてください。
今から約1,200年前の864年、富士山は「貞観噴火」と呼ばれる大きな噴火を起こしました。流れ出た溶岩は、現在の青木ヶ原につながる地形をつくったとされています。そしてその約5年後の869年、東北地方の沖で「貞観地震」が発生しました。これは東北地方太平洋岸に大きな津波をもたらした巨大地震で、2011年の東日本大震災と津波の浸水域などに共通点があることが指摘されています。
つまり順序としては、富士山の噴火が先、東北の巨大地震が後、です。
1,200年前と今が、どこか重なって見えるのは偶然ではないのかもしれません。もちろん、歴史がそのまま繰り返されるとは限りません。ただ、過去の噴火や巨大地震の並びを知っておくことは、富士山の麓に暮らす私たちにとって無意味ではないはずです。だからこそ、この事実は頭の片隅に置いておきたいと思っています。
富士山は、日本の自然の一部です
富士山は美しい山です。世界文化遺産にも登録され、今もなお多くの人をひきつけています。
その一方で、富士山は活火山でもあります。300年以上噴火していないという時間も、富士山の長い歴史の中では特別に長い静穏期の一つにすぎません。過去には何度も噴火を繰り返し、そのたびに山の姿や麓の暮らしに大きな影響を与えてきました。今は静かに見えても、それは「噴火しない山」という意味ではありません。
東日本大震災は、その事実を改めて思い出させた出来事でもありました。
それでも、山はそこにある
震災から15年。今日もこの山は変わらずそこにあります。
雪をまとって、曇り空の下で静かに息をしています。何万年もそうしてきたように。
自然は人間の都合で動くわけではありません。富士山がいつ動き出すかは、誰にも分かりません。だからこそ、知ることが大切なのだと思います。この美しい山の、もう一つの顔を。
富士山ガイド竹沢は、富士山南麓・青木ヶ原樹海のガイドツアーを行っています。
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