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富士山を学ぶ:富士山の絵画

凱風快晴

富士山を学ぶシリーズ。
前回まで、芸術の源泉としての富士山をテーマに「富士山の文学」について学んできました。

芙蓉の人
富士山を学ぶ:近代文学富士山を学ぶシリーズ、芸術の源泉編 今回でラストになります。 ここまで古典文学・中世の文学・江戸の文学と学んできて、今回は「富士山に関する近代文学」について学んでいきます。 富士山は、正岡子規、夏目漱石、北原白秋、太宰 治ら明治から現代にいたるよく知られた多くの文豪らにも愛されてきました。 その代表的な人物や作品をピックアップしています。...

今回はそれに引き続き「富士山の絵画」について学んでいきます。

「富士山」は画家のみならず日本人の多くが一度は描いたことがあるであろう絵の題材であり、想像してすぐに描くことができるほどイメージしやすい姿をした山です。

そして富士山ほど多くの人に描かれた山は、日本のみならず世界でも類がないといえるでしょう。

かつては遠くから眺める遥拝の対象であった富士山。いつごろからその姿を描くようになったのでしょうか?

富士山を描いた絵として現存する最も古い作品は、平安時代の絵師 秦到貞(はたのちてい)作 「聖徳太子絵伝(しょうとくたいしえでん) 第三面」といわれています。
それ以前にも富士山を描いた屏風絵があったようですがそれらの作品は現存しません。
この作品は聖徳太子の伝記『聖徳太子伝暦(でんりゃく)』をベースに絵画化されたもので、富士山とともに、太子が名馬「黒駒」に跨り富士山頂へ駆け上がる姿が描かれています。

鎌倉時代に入ると「一遍上人絵伝」「遊行上人縁起伝」などの絵巻物に富士山が登場、この頃から富士山頂が信仰の証でもある三つの峰で描かれるようになります。

その後室町時代末期に、狩野元信によって描かれたといわれる『絹本着色富士曼荼羅図』では、田子の浦から山頂までの富士登山をする人々が描かれ、登山者たちが浅間神社で禊をし村山で水垢離する姿、山頂の三峰においてはそれぞれ仏様が鎮座する姿が描かれています。

同じく室町時代の作品として、禅僧であり水墨画家である雪舟の筆とされる『富士三保清見寺図』があります。
清見寺は現在の清水区興津に位置する寺院で、足利尊氏、今川義元、徳川家康ら武将や夏目漱石・島崎藤村などの文豪ともゆかりのある名刹。
その寺と三保の松原そして富士山の構図は後世の富士山図に多大な影響を与えたといわれ、室町から江戸時代を通じ絶えず模写されました。

続いて江戸時代、その雪舟の構図を継承した作品として、
江戸時代初期の狩野派の絵師 狩野探幽による「富士山図」が知られています。
探幽は16歳で幕府の御用絵師となり、江戸城や名古屋城、大徳寺や妙心寺の障壁画などの作品も数多く残した画家です。
「富士山図」においては、日本平方面から富士山を望み、左に清見寺右に三保の松原という構図を踏襲しています。

そしてこの江戸時代に成立した新しい絵画「浮世絵」が登場します。
富士山を描いた浮世絵師として特に知られるのは葛飾北斎歌川広重

葛飾北斎(1760~1849年)江戸時代後期の浮世絵師。化政文化を代表する一人。
浮世絵や挿絵、肉筆画など生涯で発表した作品は3万点を超える。代表作に「富嶽三十六景」や「北斎漫画」など。

富士山を描いた『富嶽三十六景』は、三十六景と題されているが実際は全部で46図。版元または北斎自身が満足しなかったの後に10図書き足したとされています。
その追加された10図は「裏富士」とも呼ばれ、藍色で刷られた当初の36図とは異なり墨図で刷られている。
この作品集において特に傑作とされているのは、
「凱風快晴」(がいふうかいせい) 「神奈川沖浪裏」(かながわおきなみうら)「山下白雨」(さんか・はくう)で合わせて三大役物と呼ばれています。

歌川広重(1797年~1858年)江戸時代後期の浮世絵師
ゴッホやモネなどの西洋の画家にも影響を与えた人物。代表作に「東海道五十三次」『名所江戸百景』など

北斎同様多くの富士山の絵を描いており広重がはじめて手がけた富士の連作『不二三十六景』と死後に出版された『冨士三十六景』の2種類。
そして代表作である「東海道五十三次」全55図のうち、「川崎 六郷渡舟」「平塚 縄手道」「箱根 湖水図」「原 朝之富」「吉原 左富士」「由井 薩埵嶺」の6図に富士が描かれています。(保永堂版東海道)

北斎・広重の浮世絵版画そして富士山の姿は、海を渡り多くの画家たちにも影響を与え欧米を中心とした海外の人たちにも知られることとなりました。

そして近代において最も多くの富士山を描いた人物として知られるのが横山大観(1868~1958年)日本の美術家、日本画家。明治・大正・昭和と3代にわたる画界の重鎮。

富士山を描いた作品は2000点を超え、近代的な富士図として評価の高い「群青富士」をはじめ富士山の異称でもある『心神』や天皇陛下に献上された『日出処日本』「四季の霊峰」「霊峰飛鶴」「蓬莱山」などがあります。

その他にも多くの著名な画家により富士山は描かれ、今なお描かれ続けています。

参考資料

アイキャッチ画像:Katsushika HokusaiSouth Wind, Clear Sky
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インタープリター竹沢
静岡県裾野市在住。 人と自然をつなぐインタープリターでありたい。 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ