これまで富士山頂を目指す登拝道、登山道について学んできました。
富士山にはこれらの道とは別に信仰の道として、中腹を回る「お中道巡り」と頂上火口の周りを回る「お鉢巡り」がありますが、今回は富士山の中腹を一周する「お中道巡り」について学んでいきます。
お中道は富士山の五合目周辺、標高2300m〜2800m付近を周回する道で、「頂上に三回以上登ったものしか許されない」という富士講徒の修行道でもあります。
その距離全長およそ25キロ。現在では富士山西麓において日本最大級ともいわれる土砂崩れによる崩落地「大沢崩れ」の影響により周回ができなくなっています。
現在ほど拡大はしていなかったものの、江戸時代より大沢崩れの影響はあり、当時からこの「大沢越え」は難所といわれ、通常の富士登拝に用いる金剛杖よりも長い「中道杖」を手に、頭には「宝冠」と呼ばれる長い布を巻いて、いざという時には杖をピッケル代わりに、また宝冠を解いてザイル代わりに使い、お中道に臨んだといわれています。
そして、お中道の巡拝を無事終えると、御師からその証である「御許し」を授けられます。
小田原の東講においてお中道巡りは、須走口より登頂した後、須走口五合目まで下りそこから時計回りに、須山口(御殿場口)六合目→宝永山五反畑→大宮口(富士宮口)六合目→大沢右岸の東方茶屋→大沢越え→大沢茶屋または小御岳で宿泊→須走口五合目へ戻ってくるという一泊二日の行程でした。
登拝道により出発地は異なったようですが、辿るルートは同じであったようです。
また江戸時代の大沢越えは2800m付近の一の越を渡っていましたが、崩落が時代とともに拡大、明治時代には二の越に変更、さらに昭和初期には三の越と崩落が進むとともに、より標高の低いルートに変更されていきました。そして、1977年の転落事故をきっかけに大沢は通行止めとなります。
現在も利用されるかつてのお中道は以下の四ルートとされています。
富士宮口六合目から宝永第一火口を経由し御殿場口六合目へ至るルート。
須走口六合目から、吉田口下山道七合目(獅子岩)へ至るルート
吉田口下山道七合目(獅子岩)から吉田口六合目を経由し、富士山スバルライン口五合目へ至るルート。
富士スバルライン口五合目から御庭、大沢崩れに至るルート。
以上の通り、北麓である山梨県側のお中道は現存していますが、南麓である静岡県側のお中道は大沢崩れの影響もありほぼ廃道となっています。
富士登山だけでなくこのお中道巡りにも是非チャレンジしてみてください。
ただし、廃道になっている道や通行止めになっている箇所は通らず整備されている道のみでお楽しみください。