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富士山を学ぶ:青木ヶ原樹海に生きる植物たち

青木ヶ原樹海
富士山を学ぶ:青木ヶ原樹海の成り立ち。富士山の北西の山腹から西湖・精進湖・本栖湖、一帯に広がる森林地帯。隙間なく樹木が生い茂り山頂などから見下ろすと、その様子が海のように見えることから青木ヶ原樹海と呼ばれる手付かずの原生林。今回は「青木ヶ原樹海の成り立ち」について学んでいきます。...

今回は富士山の北西に広がる森、青木ヶ原樹海に生育する植物たちについて学んでいきます。

「青木ヶ原樹海」
青々とした樹木が海のように大きく広がっていることからその名がつけられています。そしてこの樹海は一年を通して青木ヶ原樹海です。
どういうことかというと、青木ヶ原樹海ではカエデやブナなど秋になると紅葉し冬になると葉を落とす落葉広葉樹が少なく、一年中、緑の葉をつけている常緑針葉樹と言われる樹木が森の大部分を占めているということです。

針葉樹

このような針葉樹は標高が高いまたは緯度が低く気温が低い地域や栄養分の乏しい痩せた大地でよく見られます。
青木ヶ原樹海が位置する標高は900m〜1400mほどで、通常この標高であれば広葉樹も多く見られますが、青木ヶ原樹海は1150年前の貞観の大噴火以後に誕生した非常に若い森であり、その溶岩に覆われた大地には平均3cm程度の厚さの土しか無く、十分に土壌ができていません。そのため植物の種類も少なく針葉樹中心の森にとどまっています。

そんな青木ヶ原樹海で見られる中心的な植物は、高木類ではツガ・モミ・ヒノキなど、低木類ではソヨゴ・アセビ・ツミシキミなどで、下草などの草本類は日光があまり入らないため多くは見られず、地表はコケ類が一面を覆っています。
コケに覆われた暗く鬱蒼とした森は青木ヶ原樹海の一つイメージになっています。

樹海はごつごつとした溶岩に覆われ土が少ないこともあり樹木はしっかりと地表に根をはることができず、溶岩の上に根が剥き出してとなっている光景がよく見られます。
そのため多くの木々が風など影響により倒れやすく、倒木も樹海では多く見られます。また、土より十分な栄養が供給されないためか、低木のソヨゴやアセビなども他の森や山に見られる種と比べて、生育に遅れが見られ幹が細く樹高も低くなっています。

このよう青木ヶ原樹海の特徴として土が少ないということが挙げられます。
そして、土以外にも植物の生育に大きく影響するものが樹海では少ないのです。

それが「水」

青木ヶ原樹海は覆う溶岩は玄武岩マグマ。この玄武岩マグマは水が浸透しやすいため、雨水も地表に長時間溜まることがなく、全て地下へと浸透しています。そのため、樹海は水が少なく川や池もありません。土が少ないだけでなく水も少ない、更に高木の針葉樹によって日光も遮られているという事で植物が生きていくには過酷な世界ともいえます。

それでも種類が少ないとはいえ、森と呼ばれるほど樹木が生い茂っているのはなぜでしょうか?

その理由は樹海を歩き森の様子を観察すると分かります。
樹海では倒木がよく見られます。
その倒木を見ると、倒れたばかりものから、しばらく時間が経過した倒木、また相当な時間が経過し木の姿をほとんど残していないものも見られます。
そして、時間が経過した倒木の表面には新しい植物の芽が見られます。倒木はやがてバクテリアらにより分解され土に還っていきますが、土に還る前より新しい植物の栄養分としてその土台となり、樹海の植物の繁栄を支えています。
このように倒れた木が次の新しい生命の礎となり新たな植物、木々が誕生していくことを倒木更新と呼びます。
土が少ない青木ヶ原樹海で新しい植物が生育するのは倒木のおかげ、倒木が土と同じ役割をしているということです。

倒木更新

土の代わり役割をしているのは倒木だということがわかりました。
それでは水は??
水の代わりをしているものも樹海は観察しているわかります。

それは地表や樹木の表面にみられるコケです。
溶岩は水を浸透させますが、コケは反対にしばらく水を保ってくれます。このコケに蓄えられた水より植物は水を得ているのです。
その他、富士山にぶつかった西風が山をかけ上がりやがて冷やされることで、水蒸気が霧や雲となり水をもたらします。その雨粒にならない空気中の水滴も樹海の植物に水を与えています。
このように雨水が地表に残らなくても樹海の植物らは水を得ることができているのです。

また、台風などで倒れた木が増えるとその場所が日光がよく当たる「ギャップ」となり新たな植物が生育しやすい環境となります。

こうしてまだ歴史の浅い青木ヶ原樹海は森としてのサイクルを繰り返しながら繁栄を続け、やがて数百年後?には他の森同様、針葉樹だけでなく広葉樹も豊かに生い茂る森に変化していることでしょう。
若いゆえに人間同様、その成長・繁栄が楽しみな森、それが青木ヶ原樹海です。

ABOUT ME
インタープリター竹沢
静岡県裾野市在住。 人と自然をつなぐインタープリターでありたい。 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ