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【登山初心者必見!】自然への愛をカタチに。Leave No Trace 7原則ってなんだろう? (シリーズ第1回)

こんにちは!富士山ライフブログへようこそ!
今回は主に登山初心者さん向けのブログになります。

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山の清々しい空気、頂上からの絶景、歩ききった達成感…登山の魅力は尽きませんよね。自然の中に身を置くことで、心も体もリフレッシュできます。

過去のブログで、少しだけ「ゴミ問題」に触れましたが、私たちが大好きなこの自然を未来にも残していくためには、もう少し踏み込んで「自然への配慮」について考えてみる必要がありそうです。

そこで今回は、**「Leave No Trace (リーブ・ノー・トレース / LNT)」**という、世界中の登山者やアウトドア愛好家の間で大切にされている考え方をご紹介します。

「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、大丈夫!これは特別なルールではなく、**「自然にお邪魔させてもらう私たちが、できるだけ足跡を残さずに楽しむためのヒント」**なんです。

今回は、その基本となる**「Leave No Trace 7原則」**を一緒に学んでいきましょう! これを知ることで、あなたの登山がもっと深く、もっと優しいものになるはずです。

Leave No Trace (LNT) って、そもそも何?

Leave No Trace は、直訳すると「足跡を残さない」。
つまり、私たちが自然の中で活動するときに、環境への影響をできる限り最小限にするための行動指針のことです。美しい自然を守り、将来の世代も同じように楽しめるようにするための、世界共通の考え方なんですよ。

自然への思いやりを形に!Leave No Trace 7原則

では、具体的にどんなことを心がければ良いのでしょうか? LNTには7つの原則があります。一つずつ見ていきましょう!

原則1:事前の計画と準備 (Plan Ahead and Prepare)

  • なぜ大切?: しっかり準備することで、道迷いやケガを防ぎ、無理なく安全に登山を楽しめます。また、現地のルール(登山道の状況、キャンプ指定地、火気の使用ルールなど)を事前に知ることで、知らず知らずのうちに自然に負荷をかけてしまうことを避けられます。混雑する時期や場所を避ける計画も、自然への影響を減らすことに繋がります。

  • 具体的にどうする?:

    • ルートを調べる: 地図やガイドブック、登山アプリなどで、距離、高低差、コースタイムを確認しましょう。自分の体力に合った計画を立てることが重要です。

    • 天気をチェック: 山の天気は変わりやすい!必ず最新の天気予報を確認し、雨具など必要な装備を準備しましょう。

    • 持ち物リスト作成: 必要な食料、水、救急セット、ヘッドランプなどをリストアップして忘れ物がないかチェック!

    • 現地のルール確認: 行く山のウェブサイトや登山口の情報を確認し、登山道の状況や規制、トイレの場所などを把握しておきましょう。

原則2:影響の少ない場所での活動 (Travel and Camp on Durable Surfaces)

  • なぜ大切?: 登山道以外の場所を歩くと、植物を踏みつけてしまったり、土壌が削られて登山道が広がってしまう原因になります。キャンプも、決められた場所や既に踏み固められた場所を選ぶことで、新たな影響を与えるのを防ぎます。

  • 具体的にどうする?:

    • 登山道を歩く: ぬかるみを避けたり、近道したりするために登山道から外れないようにしましょう。道は一列で歩くのが基本です。

    • 休憩・キャンプは指定地で: 休憩する時も登山道を塞がず、岩の上など硬い場所を選びましょう。キャンプは必ず指定された場所や、既に利用されている裸地、砂地、岩場などで行います。植生の上でのキャンプは避けましょう。

    • 水場はきれいに: 水場から少し離れた場所で調理や洗い物を行い、汚れた水が直接流れ込まないように配慮しましょう(洗剤の使用は控えましょう)。

原則3:ゴミの適切な処理 (Dispose of Waste Properly)

  • なぜ大切?: これは基本中の基本!ゴミは景観を損なうだけでなく、野生動物が誤って食べてしまったり、土壌や水を汚染したりする原因になります。

  • 具体的にどうする?:

    • すべて持ち帰る! (Pack it in, Pack it out): 食べ物の包装、飲み物の容器はもちろん、食べ残し、果物の皮や芯、ティーバッグなども全てゴミ袋に入れて持ち帰りましょう。「自然に還る」と思われがちなものでも、分解には時間がかかり、その土地の生態系に影響を与えます。

    • トイレ問題:

      • 排泄物: 山小屋や登山口のトイレを利用するのがベスト。ない場合は、携帯トイレを持参・使用し、持ち帰りましょう。やむを得ず野外で用を足す場合は、水場や登山道から離れた場所を選び、穴を掘って埋め、使用した紙は必ず持ち帰ります(土に埋めても分解されにくいです)。

      • トイレットペーパー: 使用済みのものは、ジップロックなどに入れて必ず持ち帰りましょう。

原則4:見たものはそのままに (Leave What You Find)

  • なぜ大切?: きれいな花、変わった形の石、落ちている枝…つい持ち帰りたくなりますが、それらはその場所の自然の一部です。持ち帰ることで、その場の生態系や景観を損ねてしまいます。

  • 具体的にどうする?:

    • 持ち帰らない: 高山植物を摘んだり、石や枝、木の実などを持ち帰るのはやめましょう。写真に撮って思い出に残すのが素敵です。

    • 自然のままに: ケルン(道しるべの石積み)をむやみに作ったり、壊したりしないようにしましょう。木の枝を折ったり、岩に名前を刻んだりするのもNGです。

原則5:たき火の影響を最小限に (Minimize Campfire Impacts)

  • なぜ大切?: 焚き火は、山火事のリスクがあるだけでなく、燃え跡が景観を損ねたり、土壌にダメージを与えたりします。また、燃料となる枝を集めることで、周囲の環境を変えてしまいます。

  • 具体的にどうする?:

    • ルールを確認: そもそも国立公園や多くの山域で焚き火は禁止されています。必ず事前に確認しましょう。

    • 焚き火台を使う: 許可されている場所でも、地面で直接火を焚く「直火」は避け、必ず焚き火台を使用しましょう。

    • 燃えかすは持ち帰る: 燃え残った炭や灰は、完全に消火した後、ゴミとして持ち帰りましょう。

    • 携帯コンロがおすすめ: 暖を取ったり調理したりするには、軽量で環境負荷の少ない携帯用ガスコンロの利用が最も推奨されます。

原則6:野生動物への配慮 (Respect Wildlife)

  • なぜ大切?: 野生動物に近づいたり、餌を与えたりすることは、動物たちの自然な生態や行動を変えてしまい、人馴れさせてしまう危険があります。人馴れした動物は、人の食べ物を求めてザックを漁ったり、時には人を襲ったりすることにも繋がりかねません。

  • 具体的にどうする?:

    • 遠くから静かに観察: 動物を見つけても、大声を出したり追いかけたりせず、静かに遠くから見守りましょう。

    • 絶対に餌を与えない: 人間の食べ物は動物にとって栄養過多や病気の原因になります。食べ残しやゴミを放置しないことも重要です。

    • ペットは管理を徹底: 犬などを連れて行く場合は、必ずリードをつけ、他の登山者や野生動物に配慮し、排泄物はきちんと処理しましょう(ペット禁止の山域も多いので注意)。

原則7:他の登山者への配慮 (Be Considerate of Other Visitors)

  • なぜ大切?: 山はみんなで楽しむ場所です。お互いに気持ちよく過ごせるように、思いやりの心を持つことが大切です。

  • 具体的にどうする?:

    • 挨拶を交わす: すれ違う人とは「こんにちは!」と挨拶をしましょう。

    • 道を譲り合う: 狭い道では、基本的に登りの人が優先ですが、状況に応じて声を掛け合い、安全にすれ違いましょう。

    • 休憩場所を選ぶ: 登山道の真ん中や狭い場所での休憩は避け、他の人が通りやすいように配慮しましょう。大人数の場合は特に注意が必要です。

    • 静けさを楽しむ: 大声で話したり、ラジオや音楽を大音量で流したりするのは控えましょう。自然の音や静けさを楽しむのも登山の醍醐味です。

まとめ:自然への感謝を、行動で示そう!

今回は、Leave No Trace の7原則をご紹介しました。
たくさんあって覚えるのが大変!と感じたかもしれませんが、一つ一つは「自然や周りの人に、ちょっとだけ気を配る」というシンプルな思いやりから来ています。

この7つのヒントを心に留めておくことで、私たちは美しい自然を守り、未来の登山者も同じように素晴らしい体験ができるように手助けすることができます。

難しく考えずに、まずはできることから少しずつ意識してみてくださいね。

さて、次回は**「ハイキングで実践!Leave No Trace のヒント集」**として、これらの原則を実際の登山でどう活かせるか、もっと具体的なテクニックや装備選びのコツなどをご紹介します!お楽しみに!


ABOUT ME
富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ