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世界文化遺産富士山構成資産1-4須走口登山道(すばしりぐちとざんどう)

みなさん、こんにちは!富士山に興味を持っている方、登山が好きな方、そして文化や歴史が好きな方、どなたも大歓迎です!今日は富士山の登山道の一つである「須走口登山道」についてご紹介します。

突然ですが、「須走(すばしり)」という名前を聞いたとき、どんなイメージを持ちますか?名前の響きだけでも、何だか風が吹き抜けるような爽やかさや、砂がさらさらと流れるような軽やかさを感じませんか?実はこの名前には、富士山ならではの特別な意味が隠されているんです。

さらに、この須走口登山道には、他のルートにはない文化的な背景や、宝永噴火による自然災害の記憶も刻まれています。ただ登るだけでなく、「歩くことで富士山の物語を感じられる道」として、とても魅力的な場所なんです。

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それでは、須走口登山道の歴史や文化的な価値について、さっそくお話ししていきましょう!

須走口登山道:信仰と自然が紡ぐ物語の道

富士山の東麓に位置する須走口登山道は、信仰や歴史、自然災害の記憶をたどることができる特別なルートです。この道が世界遺産の構成資産に選ばれた背景には、富士山信仰の歴史だけでなく、「須走」という地名の由来にも関わる独自の文化的な価値が含まれています。


「須走」という名前の由来

須走という地名の由来には、いくつかの説があります。その中でも特に有名なのが、富士山の噴火や火山活動に由来する説です。

  1. 「砂走り」に由来する説
    須走口には、火山砂で覆われた「砂走り」と呼ばれる斜面があり、この特徴的な地形が地名の由来とされています。噴火で噴出した火山砂を人々が「砂が走るように流れる」と表現したことが、「須走」の名に繋がったといわれています。
  2. 溶岩流に由来する説
    一方で、古代の火山活動で流れ出た溶岩が山麓を「須(勢いよく)走る」様子からこの名がついたという説もあります。この説は、富士山の噴火が人々の生活にどれほどの影響を与えたかを物語っています。

いずれの説にも共通しているのは、富士山という大自然が地形だけでなく地名にも大きな影響を与えてきたことです。この地名は、火山活動と人々の暮らしがいかに密接に関係していたかを示す一つの証拠といえます。




須走口登山道と信仰の道

須走口登山道は、須走浅間神社を出発点とする信仰の道として古くから親しまれてきました。ここでは、信者たちが富士山を神聖視し、その恩恵に感謝しながら巡礼の旅に出発しました。また、この道は吉田口登山道の下山ルートとしても重要な役割を果たし、火山砂による「砂走り」が疲労した登山者の下山を助ける道となりました。

さらに、須走口登山道沿いには、信仰の名残を伝える石碑や祠(ほこら)が点在しています。これらは、かつての富士講信者たちが残したもので、富士山信仰の歴史を物語っています。


宝永噴火と須走の風景の変化

1707年の宝永噴火は、須走口登山道とその周辺に大きな変化をもたらしました。大量の火山灰が降り積もり、「砂走り」として知られる斜面が形成されました。この地形は登山の際の負担を軽減するだけでなく、宝永噴火という自然災害の記憶を今に伝える重要な証拠でもあります。

宝永噴火は須走地域全体に深刻な影響を及ぼしましたが、その一方で、富士山信仰がさらに強化される契機にもなりました。須走浅間神社では噴火の鎮静を願う祈りが捧げられ、須走口登山道は富士山信仰の象徴としての重要性を増していきました。




須走口登山道の文化的意義

須走口登山道は、単なる登山ルートではありません。地名に込められた自然の力、信仰の道としての歴史、そして宝永噴火が刻んだ記憶がすべて一体となり、文化的景観としての価値を持っています。この道を歩くことで、富士山がただの山ではなく、人々の精神的な支柱であり、自然と文化が融合した特別な存在であることを実感するでしょう。


須走口登山道を歩いて感じる富士山の物語

須走という地名に込められた自然と歴史の意味、信仰の道としての須走口登山道の役割、そして宝永噴火の記憶――これらを感じながら歩くことで、富士山という存在の奥深さをより理解することができます。

富士山を訪れる際には、ぜひ須走口登山道を歩いてみてください。この道が語る物語は、富士山が単なる「山」を超えた特別な存在であることを教えてくれるはずです。



 

ABOUT ME
富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ