富士山の北西麓に広がる「青木ヶ原樹海」は、その神秘的な自然環境から観光や登山の目的地として知られていますが、実は多くの学校が修学旅行や野外活動の学習先としてこの森を選んでいます。この記事では、教育旅行の視点から見た青木ヶ原樹海の価値や、現地で得られる“学びの深さ”について紹介します。

自然から学ぶ「生きた教室」
青木ヶ原樹海は、864年の富士山噴火によって生まれた溶岩地形の上に広がる原生林です。苔むした溶岩、根を張り巡らせる木々、独特の湿度と静けさ。これらすべてが、教科書では味わえない“本物の自然”の教材です。
理科や地理の授業で習うような、
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火山地形の成り立ち
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森林の植生と生態系
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溶岩洞窟の形成と気候特性
といった知識を、自分の目で見て、耳で聞いて、手で触れて体験できるのが、青木ヶ原樹海の最大の魅力です。
なぜ教育旅行の目的地に選ばれているのか?
1. 地質・生態のフィールドワークに最適
溶岩の上に形成された独特の植生は、時間をかけて自然がどう再生されていくのかを学ぶ場になります。森林の下には薄い土壌しかなく、木の根が地表を這う様子を見て驚く生徒も多いです。
2. 「静けさ」がもたらす内省と感受性
人の気配がほとんどない森の中に入ると、聞こえるのは風の音、鳥のさえずり、自分の足音のみ。こうした環境に身を置くことで、日常とは異なる集中力や感性が生まれ、生徒自身の内面に目を向ける貴重な時間になります。
3. グループでの学びと協力の機会
野外学習では、地図を読みながらのルート探索や、生物観察などの課題が設定されることもあります。グループで助け合いながら進むことで、協力する力、問題を解決する力、自然に対する敬意なども自然と育まれます。
ガイドツアーで深まる学び
教育旅行での訪問では、ガイド付きツアーの利用が推奨されています。ガイドの役割は単なる道案内にとどまりません。
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地形の成り立ちや植物の特徴を、その場で説明
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生徒の好奇心を引き出す問いかけ(「この木の根はなぜ露出しているのだろう?」など)
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安全なルート選定と行動管理
ガイドがいることで、森の中での学びはぐっと深くなります。生徒にとっても「ただ歩いただけ」では終わらない、心に残る学習体験になります。
おすすめ団体:NPO法人富士山エコネット
http://www.fujisan-eco.net/
自然体験で生まれる気づき
教育旅行において大切なのは、知識を得るだけでなく、「感じること」「気づくこと」。青木ヶ原樹海の森の中では、
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苔むした倒木の上に小さな芽が育っているのを見て「命のつながり」を実感したり、
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洞窟のひんやりした空気に触れ、「自然が作り出す環境の力」に驚いたり、
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樹海の静けさに包まれて、いつもとは違う自分の感情に気づいたり
することがあります。こうした体験は、日常生活では得がたい感性や視点を育むきっかけとなります。
おわりに:青木ヶ原樹海でしか得られない学びを
青木ヶ原樹海は、ただ“観光する森”ではありません。長い時間をかけて形作られた自然の力、静けさの中にある命の営み、そしてそれを学ぶ人と人のつながり――これらすべてが教育旅行という形で、生徒たちの心に深い学びとして刻まれます。
「なぜ森に行くのか?」という問いに対する一つの答えが、青木ヶ原樹海にはあります。自然から学び、自然と向き合うことの大切さを、次の世代に伝えるきっかけとして、今後も多くの学校がこの神秘の森を訪れることを願っています。