富士山を学ぶ

今日、目がかゆい。富士山南麓の花粉事情、じつはちょっと複雑でした

今日、目がかゆい

今日は天気がいい。そして風が強い。

富士山南麓を歩いていたら、なんだか目がかゆくなってきました。普段は花粉症でそこまで苦しむタイプではないのですが、目の痒みだけはこの季節、じんわりと来ることがあります。

「あ、花粉きたな」という感じです。


この季節、富士山南麓の花粉はこんな感じ

富士山南麓の周辺には、戦後の拡大造林政策で植えられたスギ・ヒノキの人工林が山のあちこちに広がっています。これらが3月に入ると一斉に花粉を飛ばし始める。

今日みたいに晴れて風が強い日は、花粉が遠くまで運ばれてきます。スギ花粉は条件次第で数十キロ先まで飛ぶと言われているくらいなので、南麓を歩いているだけでもしっかり浴びることになります。

この時期に気をつけたい花粉の目安はこんな感じです。

スギ(2月中旬〜4月上旬) 富士山周辺の人工林から飛来。量が多く、この時期の花粉症の主役。

ヒノキ(3月下旬〜5月上旬) スギが落ち着いてきた頃に本番を迎える。スギ花粉症の人はヒノキにも反応しやすいので4〜5月も油断禁物。

広葉樹・その他(4月〜5月) ミズナラやカエデなども春に花粉を飛ばし始める。複数が重なるこの時期は特に注意。


じゃあ、青木ヶ原樹海の中はどうなんだろう?

毎日のように富士山麓を歩いていると、ふと気になることがあります。

「樹海の中って、花粉どうなんだろう」

案内で樹海に入ると、密に茂った木々が風をさえぎって、外とは別世界のような静けさがあります。風が少なければ花粉も少ないのでは、という感覚が正直ありました。

調べてみると、これはあながち間違いではなさそうです。


実は、スギは「もともと自然に生える木」

ここで少し面白い話を。

スギというと「人間が植林した木」というイメージが強いかもしれません。確かに戦後、日本中の山に大量に植林されたのは事実です。でも実は、スギは日本固有の樹木で、古来から日本各地の山に自然に生えていました。屋久島の縄文杉や秋田の天然スギ林がその代表例で、天然のスギ林は津軽半島から屋久島にかけて今も点在しています。

つまり「人工林だからスギがいない」というわけではなく、自然の条件が整えばスギは天然に生えてくる木なのです。

では、なぜ青木ヶ原樹海にスギがいないのか?


樹海にスギがいない本当の理由

答えは、溶岩台地の「土壌」にあります。

スギは湿潤で有機質に富む深い土壌を好む木です。根をしっかり張るためには、ある程度の土の厚みが必要。ところが青木ヶ原樹海の土壌はわずか10数cmしかありません。約1,200年前の貞観大噴火で流れ出た溶岩の上に、長い年月をかけてようやく積み上がった薄い土の層です。

この環境は、ヒノキやツガのように浅い根でも生きられる木には適していても、スギにとっては厳しすぎる。だから樹海の主役はツガ・ヒノキ・モミなどになり、スギはほとんど見られないのです。

「人が植えなかったから」ではなく、「スギが育てる環境ではなかったから」というのが正確なところです。


樹海の中は、花粉が比較的少ない?

話を花粉に戻すと、この植生の話はそのまま花粉事情にもつながってきます。

スギがいない=スギ花粉が樹海内では発生しない。さらに樹海の内部は木々が密に茂っているため、外からの風が遮られやすい。周辺の山からスギ花粉が飛んできても、樹海の奥に入ってしまえば飛散量は少なくなる可能性があります。

「樹海に入ると少し楽になる」という感覚があるとすれば、あながち気のせいでもないかもしれません。

ただし、樹海にはヒノキが多く自生しているので、4月以降はヒノキ花粉が出てきます。完全に花粉ゼロの森というわけではありません(笑)。


花粉症じゃなくても、目がかゆくなる理由

わたしのように「重い花粉症ではないけど目だけかゆい」という人は、意外と多いようです。

花粉が目の粘膜に直接触れることでアレルギー反応が起きるのですが、鼻や喉の症状が出にくい体質でも、目だけ敏感に反応するケースがあります。「花粉症ではない」と思っていた人が、じつはごく軽い花粉アレルギーを持っていたということはよくある話とのこと。わたし自身もそのパターンかもしれません。


外仕事・ガイドの花粉対策

毎日のように富士山麓を歩くガイドとして、この季節にやっていることをいくつか。

一番効くのはやっぱり目を守ること。花粉用のメガネやサングラスをかけるだけで、目への花粉の侵入がかなり減ります。マスクとセットで使うと効果的です。

帰宅後すぐに洗顔・洗眼するのも習慣にしています。花粉を顔に残したまま過ごすと、じわじわ症状が悪化するので。

あとは、今日みたいに風が強い日はとくに注意。晴れた風の強い日は、気持ちよく歩けるのに花粉の飛散量は多いという、ちょっと皮肉な状況が生まれます。


それでも、この季節の富士山が好きです

目がかゆくても、風が強くても、3月の富士山南麓は気持ちいいです。

空気が澄んでいて、雪をまとった富士山がよく見える。まだ人も少なく、静かに歩けるこの季節は、ガイドとして個人的にかなり好きな時期のひとつです。

花粉対策をしっかり準備して、ぜひ春の富士山南麓を歩きに来てください。目薬も忘れずに(笑)。


富士山ガイド竹沢は、富士山南麓・青木ヶ原樹海のガイドツアーを行っています。春のツアーのご予約・お問い合わせお待ちしております。

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富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ