富士山を登る植物について学んでいきます。
このシリーズは今回で10回目。
前回の標高1600m~2400m付近に続いて、森林限界より高度に生育する植物たちについて学んでいきます。
亜高山帯上部(標高約2400m~3000m)
ここからは、コメツガやシラビソなどの高木針葉樹にかわり、ミヤマハンノキ・ミヤマヤナギなどの低木やカラマツが溶岩や砂礫地などで群落を形成する姿が見られるようになります。これらの樹木は高度の上昇とともに地を這うようにして生育し、やがて樹木限界を迎えます。
南アルプスなど他の亜高山帯上部にでは、ハイマツの低木林が発達しますが、富士山においてはハイマツが分布しないためミヤマハンノキらが低木林として群落を発達させます。
また、森林限界以上の富士山では植物が生育するには不安定な火山砂礫地の急斜面が多くなるため、崩壊地での群落が優勢となっています。
高山帯(標高約3000m~3550m)
標高3000mを越えると、溶岩の凹地にイワヒゲやツガザクラなどの矮生(わいしょう)低小木が僅かにみられるのみで、ミヤマハンノキなどの低木群落は発達できなくなり草本群落のみとなります。
その多くはイワスゲやオンダテなどが火山裸地にまばらに生えるのみとなり、それも3550m付近が上限となります。
火山礫に覆われた大地は、地表面の温度差も大きく、風雨も激しくなるため絶えず不安定な生育環境となり、植物が生き抜き環境としてはとても厳しくなります。
そのような環境でも生き抜くことができる植物としては、オンダテ、イワスゲ、イワツメグサ、フジハダザオ、ミヤマオトコヨモギなどです。
氷雪帯(標高約3550m以上)
標高3550m以上になると、コケ類や地衣類が優占する世界となり、タカネスギゴケやシモフリゴケ、チズゴケなどのコケ植物やハイイロキゴケなどの地衣類が溶岩に張り付くように群生しています。
草本植物はあまり見られませんが、近年は気候変動による温暖化、登山道や山小屋などの整備による人為的要素も重なり、今まで見られなかった植物も山頂にて散見されていようです。
例えば、イワスゲやイワツメクサ、ノガリヤスら草本植物に加え、低木のミヤマヤナギまでもが発見されています。
山頂に限らずですが、意図せずも人の手が入ることによって植生や自然環境というのは変化します。本当の意味での手付かずの自然を残すというのは難しいのです。
富士山で見られる植物:ミヤマヤナギ
分布帯:亜高山帯~高山帯 生育環境:砂礫地
生活型:落葉低木 樹高:1~5m 開花時期:初夏~夏
いわゆる柳の木です。
山の深い場所に生育するという事で「深山柳(ミヤマヤナギ)」
富士山では御中道付近でよく見られます。富士山の森林限界付近でみられる代表的な低木で、綿毛を付けた種子がふわふわと舞う柳絮(リュウジョ)も7月半ばに見られます。
教材資料