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天気を学ぶ:雷の予想

天気を学ぶ:落雷の種類夏の時期の最も恐ろしい気象現象の一つは落雷です。 雷はまさに神出鬼没ともいえるほど予想が難しく、出発時は雲ひとつない快晴であっても午後になると天候が急変し雲がもくもくと現れ雷に襲われることも珍しくありません。とくに山中にいる時は逃げ込む場所もなく雷が去るまで恐怖に怯えながら過ごすはめになります。そして雷は積乱雲の中で発生します。...

雷のなかでも、「界雷」「熱界雷」はある程度発生しやすい気圧配置が決まっいるため行動前に天気図を確認する事で予想ができます。

【夏の寒冷低気圧に注意】
前線を伴わない低気圧は、たいてい上空に強い寒気を持っておりその影響で下層との温度差が大きくなり、大気が不安定になるため雷を伴った積乱雲が発生しやすくなります。

この前線を伴わない低気圧は主に寒冷低気圧で、その周辺や東〜南東側では下層に暖かく湿った空気が流れ込むため積乱雲が発達しやすくなります。そのような地域(寒冷低気圧の東〜南東側)に該当する場合には落雷の危険がある事を充分注意する必要があります。
また、熱雷が午後に発生するのに対して、寒冷低気圧による雷は熱界雷である事が多いため、時間帯関係なく発生します。
日本海側の山では早朝から落雷する事が多くなりますが、一旦収まっても再び午後から雷に見舞われることがあります。
寒冷低気圧は移動速度が遅くこのような状況が2〜3日程度続くこともあるのでその動きにしばらく注視が必要です。



【日本海より南下の前線に注意】
※2008年7月28日天気図(気象庁、過去の天気図より)

日本海を寒冷前線や停滞前線が南下している時、前線の南側にあたる本州付近は太平洋高気圧に覆われ、晴れて暑くなります。
そして、本州付近は、太平洋高気圧の外側が位置することで高気圧の縁にあたり、その縁から回り込むように湿った空気が南から本州付近に入ってきます。
このような気象条件の時に、前線が近づいてくると、前線の北側より上空へ冷たい空気が流れ込み、大気が不安定となり積乱雲が発達します。特に寒冷前線の南側300kmの範囲では警戒が必要です。300kmというと日本海側の地域から太平洋側の地域を含む広い範囲となり、このようなとき早朝に日本海側の山などで発雷が起こり、その後、午後から太平洋側の山などで起こることが多くなります。

以上、積乱雲の発達には「上空の寒気」「暖かく湿った空気」という異なる性質の空気が大きく関わっているというのがわかります。

【南海上の熱帯低気圧や台風の接近に注意】
※2008年8月19日天気図(気象庁、過去の天気図より)

日本の南海上に熱帯低気圧や台風があるときは、暖かく湿った空気が日本列島へ流れ込みやすくなるため、寒冷前線が活発化して前線の南側で積乱雲が発達しやすくなります。特に太平洋高気圧外側の縁を通り、前線に向かって湿った空気が入りやすい天気図の時に多くなります。具体的には太平洋高気圧が日本列島から東南海側へ後退したところへ、台風や熱帯低気圧が発生して日本へ接近してくる時などです。

そのほか、落雷を予想する手段としてラジオ天気図やアメダスなどで富士山頂と御前崎の気温差を計算して判断する方法があります。最も標高の高い「富士山頂」と海に近い「御前崎」二つの地点の気温差で落雷の危険度をはかります。

「富士山頂と御前崎の気温差による落雷の危険度」
気温差:25度以上 非常に危険
気温差:20度以上25度未満 やや危険
気温差:20度未満 危険度低い
※対象となる地域は、富士山や中部山岳、関東周辺の山々。

以上、落雷の予想はある程度、天気予報や天気図を確認することで可能になります。またスマホの天気アプリでも雷予想や落雷のあった場所を見ることができます。そういう意味で事前の情報さえしっかり認識しておけば落雷事故に巻き込まれることはないといえます。
安全第一で自然を楽しみ山へ登りましょう!



参考資料

ABOUT ME
富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ