お勉強

富士山登頂での心拍数と酸素飽和度の変化を知ろう

富士山は日本一の標高を誇り、多くの登山者にとって挑戦の対象となっています。しかし、高所での登山は身体にさまざまな負担をかけるため、適切な準備と計画が必要です。2022年9月に実施された研究では、富士登山中の生理的反応と自覚症状が詳しく調査されました。

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研究概要

この研究では、平均年齢20.3歳の成人男女6名が吉田ルートを通じて富士登山を行い、心拍数、動脈血酸素飽和度(SpO2)、および自覚症状が測定されました。

主な結果

  • 心拍数の変化: 登山中、心拍数は八合目で最高値の約137 bpmに達しました。
  • SpO2の変化: 八合目で79.0%、八合五勺で83.8%、山頂で77.8%と、標高が上がるにつれてSpO2が低下しました。しかし、八合目の山小屋で一泊した後、翌日の登山時にはSpO2が回復する傾向が見られました。
  • 自覚症状: 参加者6名中4名が八合目付近で息切れ、倦怠感、軽いめまいなどを報告しましたが、頭痛の訴えはなく、高山病と断定することは困難でした。また、3名は八合目での宿泊後に症状が消失しました。


考察と結論

  1. 八合目付近での生理的負担の増大: 心拍数とSpO2の変化から、八合目付近で身体への負担が最大となることが示唆されました。
  2. 宿泊の重要性: 八合目での宿泊は高所適応を促進し、翌日の登山時の生理的指標の改善や自覚症状の軽減に効果的であることが確認されました。
  3. 安全な登山計画の推奨: 弾丸登山(無泊での強行登山)よりも、宿泊を含む余裕のある登山計画が推奨されます。これは、高山病のリスクを軽減し、安全性を高めるためです。
  4. 高山病リスクへの注意: 登山中の自覚症状に注意を払い、異常を感じた場合は速やかに対応することが重要です。特に、頭痛やめまいなどの症状が現れた場合、高山病の可能性を考慮し、適切な対処が求められます。


安全な富士登山のために

富士登山を計画する際は、以下の点に留意しましょう。

  • 事前準備: 十分なトレーニングと装備の準備を行い、体調を整えてから登山に臨みましょう。
  • 計画的な行程: 無理のないスケジュールを組み、可能であれば八合目付近での宿泊を検討してください。
  • 高山病への対策: 高所での体調変化に敏感になり、異常を感じたら無理をせず、必要に応じて下山する判断も重要です。

富士山は美しい景観と達成感を提供してくれますが、安全第一で登山を楽しむことが大切です。適切な準備と計画で、素晴らしい登山体験を目指しましょう。

参照論文
https://onomichi-u.repo.nii.ac.jp/record/2000241/files/kei24-1_105-112.pdf



 

ABOUT ME
富士山ガイド竹沢
静岡県裾野市在住。 富士山に暮らす富士山ガイド 富士山エコネット認定 エコツアーガイド 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ